今回は、腰痛と生活習慣の関係について述べていきます。
腰痛になりやすい生活習慣にはどのようなものがあるのか。
日本整形外科学会・日本腰痛学会監修の「腰痛診療ガイドライン2019」(執筆時点で最新版、以下「ガイドライン」と記述)に基づき、解説していきたいと思います。
腰痛と関連する生活習慣
腰痛と関連する生活習慣としては、以下のようなものが挙げられます。
- 体重
- 喫煙
- 飲酒
- 労働環境
- 運動習慣
- ストレス
ここからは、それぞれの項目について見てみましょう。
体重との関連性
体重は「肥満」でも「痩せ」でも、腰痛のリスクがあるようです。
ガイドラインでは、体重コントロールと腰痛について、弱い関連性が認められています。
BMIの標準(18.5~25.0)以上の肥満の場合に腰痛発症リスクと弱い関連性がみられます。
一方、標準より低体重の場合も同様にリスクと弱い関連性がみられます。
以上より、標準体重の維持が腰痛の予防になると示唆されています。
肥満傾向にある方と腰痛の関連性については、一般の方でも何となくイメージできると思いますが、
低体重の場合にも関連性があることについては意外に思う方もいるかもしれません。
筆者の臨床経験からいくと、低体重と腰痛の関連性については、割と納得がいく感じがします。
ほっそりとした方(特に女性)で腰痛を感じている方は割と多いです。
そしてこのような方は、大きく分けて
・背骨の周囲の筋肉が硬くなっているタイプ
・筋肉全体がフワフワで背骨を支えきれていないと感じられるタイプ
の2通りがあるように感じられます。
喫煙との関連性
喫煙にも腰痛のリスクがあります。
ガイドラインでは、喫煙者と腰痛について、中程度の関連性が示されています。
特に 若年者にその傾向が強いとされています。
では、どうして喫煙が腰痛に関連するのでしょうか?
医学界では、次の3点が指摘されています。
- ニコチンが毛細血管を収縮させるため、椎間板が変性するため
- ビタミンC(コラーゲン)が不足するため
- カルシウムの吸収率が低下し骨密度が低下するため
また、この影響は受動喫煙でも生じるとされています。
飲酒との関連性
アルコールの摂取と腰痛についても関連性を指摘する研究もあります。
ただし研究の数は少なく、解釈には注意が必要とされています。
労働環境との関連性
カラダに負担がかかる労働環境も腰痛のリスクとなるようです。
疫学調査では運輸、介護などの職業に腰痛が多くみられ、身体的負荷の大きい労働環境は腰痛の危険因子であると考えられています。
一方で因果関係の特定の難しさもあり、その医学的根拠(EBM)の程度は中程度とされています。
一方、事務仕事など力学的負荷は大きくない労働環境については、今回のガイドラインでは言及されておらず、関連性は不明確です。
運動習慣との関連性
運動不足も腰痛のリスクとなるようです。
ガイドラインによると、運動しない群と運動する群では、運動しない群で腰痛のリスクが増加したとの報告もあります。
活動的な日常生活と慢性腰痛の予防には、弱い関連性がみられ、適度な運動を取り入れた生活習慣が推奨されています。
ストレスとの関連性
ストレスも腰痛のリスクと関連します。
ガイドラインでは、職場における仕事の満足度、人間関係、精神的ストレスなどは、腰痛の発症と強い関連があるとされています。
また、これらの「心理社会的因子」は腰痛発症後、治っていく過程にも影響を与えるとされています。
腰痛の予防、治療、いずれの過程においても穏やかでストレスの少ない生活が推奨されています。
まとめ
今回は、『あなたを腰痛にする5つの生活習慣』ということで、腰痛と生活習慣の関係を取り上げてみました。
喫煙、運動習慣など、各個人で取り組めることもあれば、労働環境やストレスなど、個人ではなかなか改善しにくい生活習慣もあります。
ただ、これらを知っているのと知らないのとでは、やはり対応が異なってくると思いますので、最新の知見を知っておくことも大切かと感じました。
特にストレスと腰痛の関係については、近年さかんに取り上げられています。
これからも、有用な情報があればシェアしていきたいと思います。